パンづくりと聞くと、「おいしいパンをつくること」がゴールだと思われがちです。
しかし実際の現場では、そこから先にある価値まで考えることが求められます。
しかし実際の現場では、そこから先にある価値まで考えることが求められます。
今回は、パンを起点にした街づくりに挑む「ル・パン神戸北野」の取り組みを通して、パンの価値をどのように広げていくのか、その考え方を紐解いていきます。
【 目 次 】
▶ ホテルの朝食から始まったパンづくり
【 目 次 】
▶ ホテルの朝食から始まったパンづくり
▶ ブランドの根幹:地産地消(キュイジーヌ・テロワール)
▶ パンを起点に、街へと広がる価値をつくる
▶ これからこの仕事を目指す人へ
▶ パンを起点に、街へと広がる価値をつくる
▶ これからこの仕事を目指す人へ
お話をうかがったのは……
ル・パン神戸北野 支配人 高野義弘 氏
ル・パン神戸北野 支配人 高野義弘 氏
製菓専門学校を卒業後、1992年ホテル日航大阪に入社。鉄板焼、フランス料理、宴会の調理部門、製菓部門を経て、製パン部門へ配属。トップベーカリーシェフとなる。得意なジャンルは、調理の経験を活かした野菜のヘルシーなパンづくり。
ホテルの朝食から始まったパンづくり
私たちは、2008年に開業した「ホテル ラ・スイート神戸ハーバーランド」のプライベートベーカリーとして誕生しました。当時、外注していたパンを、自社でつくることになったのがはじまり。次第に、宿泊されたお客様から「このパンを家に持ち帰りたい」「贈り物にしたい」という声をいただくようになり、2012年4月に独立した工房兼店舗として「ル・パン神戸北野」をオープンしました。
はじめは広告宣伝をしなかったことや、工房としての役割が大きかったこともあり、一日の売上が一万円程度だった時期もあったそうです。お客様の口コミで、次第に店の存在が知られるようになり、楽天トラベル「朝ごはんフェスティバル®2015」で優勝してからは、さらに多くのお客様にご来店いただけるようになりました。
ブランドの根幹:地産地消(キュイジーヌ・テロワール)
ラスイートグループの食の原点には、「地産地消(キュイジーヌ・テロワール)」という考え方があります。開業当時から兵庫県内の生産者と丁寧に関係を育み、兵庫五国の食材を料理に取り入れてきました。パンづくりにおいても、六甲・布引の水、夢前町産の「七福卵」、淡路島産の「自凝雫塩(おのころしずくしお)」、丹波の黒豆・小豆、灘五郷「福寿」の酒粕など、兵庫の恵みをふんだんに使用しています。
一方で、「こだわりの地元食材や世界最高品質の素材を使えばおいしいパンができる」という考えではなく、小麦粉・イースト・水・塩で成り立つ「パンづくりの基本」に忠実であることも、ル・パンが大切にしている考え方です。発酵や製法へのこだわりと探求心が、素材に「頼る」のではなく「良さ」を引き出すプロの仕事を可能にしています。
たとえば、私たちの看板商品「塩パン」に使っている淡路島産の「自凝雫塩(おのころしお)」は、旨味・甘み・辛みのバランスがとても良い塩です。しかし、地元の優れた素材だから採用したのではなく、試作を重ねる中で「このパンには、この塩が一番合う」という結論に至ったからこそ、長く使い続けています。
パンを起点に、街へと広がる価値をつくる
2025年3月、北野本店の製造体制を拡張する形で、神戸・新港町に「ラスイートルパンビル」を開業しました。製造能力を高めた「ル・パン総本店」を中心に、洋食レストランやスイーツ、ルーフトップバー、ウェディング施設までを備えた複合拠点です。
このビルが目指しているのは、「パンを売ること」をゴールにしない場づくり。パンは来店の目的であると同時に、次の楽しみへとつながる入口でもあります。では、その“入口”からどのように体験を広げていくのか。その一つのアイデアが、ル・パンが掲げる「スイーツ&ベーカリー」という考え方です。
一般的なベーカリーには、本格的な製菓や料理の技術がありません。一方でル・パンは、ホテル直営という環境の中で、プロのブーランジェ・パティシエ・料理人が仕事をしており、それぞれの技術を掛け合わせた商品づくりが可能です。
生ドーナツにパティシエが手がけたクリームを合わせた商品や、同ビル2階の「レストランカフェテラス アミ神戸」の食材をそのままパンに挟んだサンドイッチなどはその象徴。パンをきっかけに訪れたお客様が、食事やスイーツへと自然に広がっていく流れが生み出されています。
新港町は、これからの発展が期待されるエリアです。その中で人が自然と集まる場所をつくるためには、「何を売るか」だけでなく「どう人の動きを生み出すか」という視点が重要。パンが「次の楽しみへとつながる入口」になればいいなと思っています。
これからこの仕事を目指す人へ
パンづくりは決して「技術」だけで完結する仕事ではありません。素材をどう生かすかを考え、お客様の動きや反応を見て、次の一手を考えていく。その積み重ねの中で、商品もお店も育っていきます。
だからこそ大切なのは、特別な才能よりも「興味を持つこと」です。自分がつくったパンを食べてみる。違いに気づく。なぜ売れるのか、なぜ選ばれるのかを考える。その一つ一つが確実に力になります。
また、パンだけにとどまらず、料理やスイーツ、接客など、さまざまな視点を持つことも大きな強みになります。私自身、もともとはパティシエ希望でありながら、さまざまな調理のポジションを経験しましたが、遠回りに見えたその時期が今の仕事のベースになっていると思うことは少なくありません。
また、パンだけにとどまらず、料理やスイーツ、接客など、さまざまな視点を持つことも大きな強みになります。私自身、もともとはパティシエ希望でありながら、さまざまな調理のポジションを経験しましたが、遠回りに見えたその時期が今の仕事のベースになっていると思うことは少なくありません。
「パンが好き」「食べることが好き」。その気持ちがあれば、十分にこの仕事の入口に立っています。そこからどれだけ深く関わろうとするか。どれだけ自分の中で広げていけるか。ル・パンで、その一歩を踏み出したい人をお待ちしています。
