建物は、見た目だけでは分からないことがたくさんあります。
しっかりして見える建物でも、内部では鉄筋がさびていたり、コンクリートが弱っていたり。
「建てて壊す」から「あるものを長く使う」へと社会の価値観が変わる中、建物をどう維持するかは、建設業界が向き合うべき、大きなテーマになっています。
しっかりして見える建物でも、内部では鉄筋がさびていたり、コンクリートが弱っていたり。
「建てて壊す」から「あるものを長く使う」へと社会の価値観が変わる中、建物をどう維持するかは、建設業界が向き合うべき、大きなテーマになっています。
そこで、近年重要性を増しているのが、建物の状態を正確に把握する「調査診断」の仕事です。
扱うのは、電磁波レーダーやコアドリルなど、名前を聞くだけでも気になる道具たち。
設計でも施工管理でもないけれど、建物を長く安全に使っていくためには欠かせない。そんな少し意外で奥深い「調査診断」の世界をのぞいてみましょう。
設計でも施工管理でもないけれど、建物を長く安全に使っていくためには欠かせない。そんな少し意外で奥深い「調査診断」の世界をのぞいてみましょう。
【有限会社ビコウエンジニアリング】大阪府藤井寺市
建物や構造物の調査・診断を行う専門会社。コンクリートや鉄骨の状態を分析し、建物の安全性や耐久性を支える重要な役割を担っています。
技術部長 薄雲伸二 さん
建物を直す、守るために欠かせない「調査技術職」
▶どんな役割?
建物の補修や耐震工事、維持管理のための施工をする前に、まず必要になるのが、「今どんな状態なのか」を正確に知ることです。
コンクリートの強度、鉄筋の位置、劣化している場所やその程度――。そうした情報を調べ、補修や耐震につながる「判断材料」を整えることが、この仕事の役割です。
施工管理のように現場全体を動かす立場とは少し異なり、建物の状態を客観的に見極めることに、この仕事の専門性があります。目立つ仕事ではありませんが、建物を長く安全に使っていくためには欠かせない存在です。
▶どんな働き方?
仕事のスタイルにも、この職種ならではの特徴があります。
一つの現場に長く常駐するのではなく、1日〜1週間ほどの短いサイクルで、さまざまな現場を回っていきます。
主な業務の流れは、調査 → データ整理 → 報告書作成 → 提案。
現場で情報を集めるだけでなく、それを整理し、報告書としてまとめ、次の補修や耐震につながる形で提案するところまでが仕事です。現場調査とデスクワークの割合は、ほぼ50対50。現場だけでも机に向かうだけでもないところに、この仕事の面白さがあります。
また、「コンクリート診断士」という資格もあり、既存のコンクリート構造物を適切に維持管理できる専門技術者として、キャリアを築いていくことも可能です。
どんな調査をするの? その道具と手法
では、実際はどのようにして調査が行われるのでしょうか?
ここでは現場で活躍する代表的な3つの道具を紹介します。
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【電磁波レーダー】 ― コンクリートの中を“見える化”する ―
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機器を建物の表面に当てて走査すると、内部の鉄筋位置や埋設物の有無を波形として確認できます。既存建物の調査では、コア抜き前の位置確認に使われるなど、見えない部分を把握するための“入口”となる道具です。値段はなんと、車一台分!
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【コアドリル】― コンクリートを抜き取って、強度を確かめる ―
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水を流しながら回転するドリルで、壁等からコンクリートの円柱状サンプル(コア)を抜き取ります。圧縮強度を測定することで、その建物のコンクリートが設計どおりの強度を持っているかどうかを確認できます。抜き取った後は、穴の補修まで含めて対応します。
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【レーザー水平器(レベル計)】― 建物の傾きや沈下を“見える化”する ―
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本体から水平または垂直のレーザーラインを照射し、その数値を読み取ることで建物や柱の傾きを測定します。ビー玉が転がるようなわずかな傾きや、地盤沈下による変化も数値として把握できます。建物調査の基本となる機器で、目視では判断しづらい歪みを客観的に捉えることができます。
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【超音波肉厚計】― 鉄骨の厚みを測り、劣化の進み具合を確かめる ―
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聴診器のような機器を鉄骨部材の表面に当てるだけで、鉄骨の厚みを測ることができます。超音波などの反射を利用して、目に見えない箇所の厚さを数値として読み取ります。鉄はさびによって徐々に薄くなるため、現在の厚みを把握することで、劣化の進行具合を判断できます。
先輩の声:やってみて分かった!調査という仕事の面白さ
「建物を精細に調べる仕事なので、構造やどのようにつくられているのかを深く学ぶことができますし、建物だけでなく橋や鉄道施設など、普段は入れない場所に行けることも刺激があります。設計か施工管理か、という二択ではなく、すでにあるものを見極めるという関わり方があることを、この仕事を通して知りました。建築の理解を、別の角度から深めていける仕事だと思います」
これから就職活動をするみなさんへ
調査は、すべての補修や耐震の出発点であり、建物の未来を左右する重要な役割を担っています。目に見えない部分を読み解き、確かな根拠をもとに判断材料を示す。私たちは、そんな責任と専門性を持つこの仕事に誇りを持っています。建築・土木の垣根をこえて「建設」を深く理解したい方は、ぜひ話を聞きにきてくださいね。
