「仕事は先輩の背中を見て覚える」という言葉を聞いたことはありませんか?
リアルな仕事の進め方を観察しながら、動き方や判断の勘どころを身につけることができる。そうした理由から一昔前までは、「見て覚えてもらう」関わり方が多くの現場で取り入れられてきました。
一方で近年は、働き方や価値観の変化に伴い、育成の考え方は大きく変化しています。
今回は株式会社三木組の先輩方に、昨今の現場の育成事情についてお話をうかがいました。
【目 次】
・「見て覚える」だけでは育たない理由
・仕事の流れを「見える化」する
・それでも解決できない現場のリアル
~だから上司はこう指導する~
・「正解のない育成」における正解とは?
・まとめ
「見て覚える」だけでは育たない理由
まず、私たちは若手育成において「見て覚える」「一方的に教える」だけでは不十分だと感じています。
現場では、作業の手順だけでなく、「なぜそうするのか」「どこで判断するのか」まで理解しなければ、同じ仕事を再現することができません。近年はICTや省力化が進むことで、施工のスピードも格段に速くなっていますが、その分、作業の一つひとつをみずから経験する機会が少なくなり、「なぜそうなるのか」を理解する前に工程が進んでしまう場面も増えています。
こうした背景から、私たちは育成のあり方そのものを見直す必要があると考えてきました。
仕事の流れを「見える化」する
たとえば、ある現場での新人教育においては、「仕事の流れを言語化すること」を重視しています。
施工管理の業務は、一つひとつの作業がつながりながら進んでいくので、全体像を理解していなければ、目の前の仕事の意味をつかむことができません。そのため、段取りやタイミングを整理した資料を用意し、現場が比較的落ち着いている時期に、流れを分解して伝えるようにしています。単に「何をするか」だけでなく、「いつ」「なぜ」それを行うのかをセットで共有することで、理解の土台をつくることを意識しています。
また、新人メンバーは、最初はただでさえ緊張しているので、仕事の全体像が見えることで報告や相談のタイミングが取りやすくなれば…‥ という意図も込めています。「わからないから止まる」のではなく、「確認しながら進める」という流れを、一緒につくっていきたいですね。
それでも解決できない現場のリアル ~だから上司はこう指導する~
一方で、こうした工夫をしていても、現場では思うようにいかない場面があるのも事実です。ここでは代表的な二つのケースと、それに対する私たちの関わり方や工夫について紹介します。
みなさんがこれから現場に出たとき、「なぜこのような指導を受けるのか」という背景を、少しでも感じ取っていただければ幸いです。
① 手が止まってしまうケース(判断できない)
まず多いのが、説明を聞いたときは納得していても、いざその場面に直面すると「どう判断すればいいのか」がわからず、手が止まってしまうケースです。
これは、「わからないことがわからない」状態に近く、どこが判断のポイントなのかが見えていないことが原因です。そのため、何を確認すればいいのかもわからず、結果として動けなくなってしまいます。
▶そんな場面を減らすために……
はじめにすべてを教え切るのではなく、工程ごとに区切るなど、直近の業務について説明。記憶が新しいうちに、実務を体験できるようにしています。さらに内容も一から十まで説明せず、「どう思う?」「なぜだと思う?」と考えさせることで、少しずつ判断の軸を育てていくことを意識しています。
② 間違って進んでしまうケース(判断のズレ)
慣れてくると、「理解したつもり」で進めてしまうケースも出てきます。
たとえば、現場で協力業者の方から「これで合っていますか?」と確認を求められ、その場では問題ないと判断して進めたものの、あとから確認すると意図していた内容と違っていた、というような場面です。
▶そんな場面を減らすために……
特に初期の段階において、「大丈夫だと思ったことでも、必ず先輩や上司に確認・報告する」ことを徹底して伝えています。また、私たち指導する側も、現場の進捗をこまめに確認。お互いに意識をもつことが、ミスやトラブルを未然に防ぐことにつながります。
「正解のない育成」の正解とは?
若手育成に、「これが正解だ」と言い切れるものはありません。特に初めて後輩を持ったときは、先輩自身もまだ経験の浅い立場です。日々の業務を回すことに精一杯の中で、どこまで関わるべきか、どこまで任せるべきか、判断に迷う場面も多くあります。
さらに、性格や得手不得手、理解度は、一人ひとり異なります。同じ説明をしても伝わり方は違いますし、同じ関わり方が通用するとは限りません。状況や相手に応じて、その都度「どう関わることが最適か」を考え続ける。それこそが、「正解のない育成」における一つの答えだと思っています。
まとめ
かつてのように「背中を見て覚える」だけではなく、今は関わりの中で育て、学んでいく時代です。教える側も、教わる側も、それぞれに試行錯誤しながら向き合い、同じ現場の中で成長していきます。
その中で大切なのは、一人で抱え込まず、確認や報告・連絡・相談をしながら進めていくこと。施工管理の仕事は、一人で完結するものではないからこそ、「協働」に必要なコミュニケーションの基本を、日々の中で少しずつ身につけていくことが大切だと思います。一つひとつ、経験を積み重ねながら、前に進んでいきましょう。
