日々刻々と変化する現場を束ねる現場監督。一見すると、強い言葉や態度でみんなを引っ張っていく仕事のように思われがちですが、その目的は現場全体が同じ方向を向き、滞りなく仕事が進む状態をつくることにあります。
今回は、「先輩から後輩へ、教える文化」を企業の柱の一つに掲げる【株式会社三木組】の先輩に、「現場は怖そう」というイメージを覆すチームの動かし方と、コミュニケーションについてお話をお聞きしました。
株式会社三木組
工事部 所長 西岡大輝 さん
工事部 所長 西岡大輝 さん
施工管理は「作る人」ではなく「つなぐ人」
現場監督というと、体力勝負で建物をつくりあげる仕事、と思われがちですが、私自身は「自分がつくっている」という感覚はあまりありません。現場では、実際に手を動かしてくださる職方さんがいて、初めて建物が完成します。施工管理は「何を、どうつくりたいのか」を正確に伝え、現場がスムーズに進むよう調整するのが仕事。一番大切なのは、人と人をつなぐコミュニケーション力だと思っています。
相手が職方さんでも、社内の後輩でも、「人としてどう向き合うか」という姿勢がなければ、現場は思うように動きません。威圧的な態度や言葉で、一時的に動かせることはあるかもしれませんが、それでは長く続く現場にはならないのです。だから私は、一緒に働く人との良好な関係構築を何より大事にしています。
話し方とタイミングで、現場の空気は変わる
現場では、同じ内容でも「どう伝えるか」で結果が大きく変わります。特に意識しているのは、話し方とタイミング。たとえば誰かを指導するとき、多くの人がいる前で厳しい言葉をかけてしまうと、それは「指導」ではなく「見せ物」になってしまうんですよね。できるだけ人目につかないところで、落ち着いて話をするようにしています。
また、伝えるときに、頭ごなしに叱ることはまずありません。「なぜそうしてほしいのか」「なぜそれが必要なのか」理由を説明し、相手に納得してもらうことの方が価値的だからです。目的は、怒ることではなく、わかってもらうこと。そう考えると、自然と声を荒げる必要はなくなります。
「やさしい=甘い」、ではない。仕事として切り替えるという考え方
怒鳴らない、押しつけないと聞くと、「何でも受け入れる」「厳しいことは言わない現場なのでは」と思われるかもしれませんが、それは少し違います。現場は仕事の場ですから、言うべきことはきちんと伝えますし、プロとして求めるレベルがある以上、「ここまではやってほしい」というラインははっきり示します。
そのときに意識しているのが、「これは仕事だ」と、気持ちを切り替えることです。個人的な感情ではなく、プロとしてどうか、という基準で考えるんです。たとえば、私は高いところがあまり得意ではありません。でも、普段なら無理だと思う場所でも、仕事で必要なら登れます。それは気合や根性というより、「今は仕事の時間だ」と頭を切り替えているからなんですね。
同じように指導の場面でも「何をどうしてほしいかを仕事として伝える」と考えれば、厳しいことでも言うべきことは言う、という発想になります。仕事として切り替えるからこそ、人を否定せずに、必要なことを必要な形で伝えられるのです。
「いいところ探し」から関係を始める
人と関わるうえではまず、「嫌いから関係を始めない」ことを大切にしています。誰にでも、苦手な人や合わないと感じる相手はいますよね。でも、最初から欠点に目を向けてしまうと、その後のコミュニケーションはどんどん難しくなります。
だから私は、まずその人の「いいところ」を見つけるようにしています。若い係員なら、「丁寧に仕事を進められる」「職方さんとの会話が上手い」。職方さんなら、「この工程に詳しい」「段取りが的確」など、どんな人にも必ず強みがあります。そこを見つけて関係をスタートさせると、不思議と会話がしやすくなりますし、信頼も築きやすくなるんです。
中には「この人はどうしても苦手だ」という場合もあるかもしれませんが、そんなときは自分自身の話やプライベートな雑談から、少しずつ関係をつくっていけばいいと思います。完璧な自分を演じるより、人として素直な自分で向き合う方が、結果的にその後の関係は良いものになりますし、現場もうまく回ると感じています。
落ち着いて伝えるには、準備も大事
コミュニケーションでもう一つ大切なのが、「伝える前段階の準備」です。何をどうしたいのか、自分の中で整理できていなければ、相手には伝わりません。たとえば私の先輩は、朝礼で声が特に大きいわけでもないのに、なぜか皆さんが自然と聞き入るような話し方をされます。それは、人柄や積み重ねてきた経験という土台のうえに、その日に伝えるべき要点をきちんと整理されているからだと思うんです。私自身は即興で話すことが苦手なので、なおさら事前の準備が欠かせません。話す前は必ず一度立ち止まって、考えを整理するようにしています。
これから現場へ踏み出す皆さんへ
入社してしばらくは、誰でもわからないことばかりです。もちろん、私自身もそうでしたが、早く仕事を覚えようという気持ちを支えてくれたのが、親身に教えてくれた先輩たちの存在だったと思います。今は、「自分が育てていただいたように、後輩の成長を後押しできたら」という思いで、日々の現場に立っています。建設が好きで、いろんなチャレンジを楽しみたい方は、ぜひ我が社で社会人としての一歩を踏み出してみてください。一緒に成長していきましょう。
